【32冊目】「行動経済学の逆襲(著者:リチャード・セイラー)」

記事まとめ

  • 「行動経済学の逆襲(著者:リチャード・セイラー)」の本をまとめた
  • 本書を読むことで、「合理的に行動する人(エコン)を前提にしている経済学と、必ずしも合理的に行動しない人(ヒューマン)を対象にした行動経済学が、歴史的に争ってきており、それにより行動経済学が発展してきた」ということを学んだ
  • 行動経済学の発展の流れを知りたい人に本書をオススメしたい

 

「行動経済学の逆襲(著者:リチャード・セイラー)」を読みました。

本書について一言で紹介するなら、「行動経済学が従来の経済学(経済学者)と争いながら発展してきた、ということを教えてくれる本」です。

 

本書は行動経済学という学問の本ですが、行動経済学の内容というより、行動経済学の歴史を説明する本です。

著者の自伝のような本でもあり、著者が行動経済学を研究していく流れを年代順に説明していきます。

行動経済学としての研究結果についても、その都度説明されますが、メインは発展の歴史の説明です。

 

経済学や行動経済学の話のため、頭を使って考えるような実験結果の話もあり、読み応えがある本でした。

ちなみに僕は、本書を読み終えるのに、543分(9時間3分)かかりました。

 

僕は「行動経済学」という学問を、大学などで学んでおらず、よくわかっていなかったのですが、本書を読むと、心理学のイメージに近いと思ってます。

 

以前、「ファスト&スロー」という心理学の本を読みましたが、本書では、その本の著者が何度も出てきます。

本書の著者の先輩(先生)が、「ファスト&スロー」の著者です。

 

 

 

この心理学の知見を、経済学に取り入れたものが、「行動経済学」だととらえました。

 

本書では、「経済学vs行動経済学」のような関係がところどころ出てきます。

そのため、タイトルに「逆襲」と入っているわけです。

 

行動経済学者(著者)が、従来の経済学者を説得する歴史を学ぶ本です。

それが、行動経済学の発展につながっています。

 

これらの説得の話は、新しいことを実施しようとする人にとっては、学べるところがあると思っています。

実験して、証拠を見せて説得するというような、研究者/学者らしい説得の仕方をし続けています。

上司や取引先の人を説得するときに使える考え方を学ぶこともできるかもしれません。

 

僕としては、「行動経済学」の本をもっと読みたいと思うようになりました。

より人間に近い考え方にアプローチする学問ですので、ビジネスに使える学問だと思っています。

 

行動経済学を学ぶ前に、その発展の歴史を知りたいと思っている人には、本書がオススメです。

 

それでは本記事で、僕が本書から学んだことをご紹介していきます。



 

1. 「行動経済学の逆襲(著者:リチャード・セイラー)」のレビュー

  • 1-1. 本のタイトルについて
  • 1-2. 著者について
  • 1-3. 目次と概要について
  • 1-4. 僕が学んだこと

 

「行動経済学の逆襲(著者:リチャード・セイラー)」についてレビューします。

1-1. 本のタイトルについて

本のタイトルは、「行動経済学の逆襲」です。

 

タイトルの「逆襲」というのは、経済学に対する逆襲だと思っています。

本書では、「従来の経済学vs行動経済学」という構図がところどころ出てきます。

 

原著について

本書は翻訳本です。

原題は「Misbehaving: The Making of Behavioral Economics」です。

 

Misbehaving」は「不作法に振る舞うこと」という意味です。

これは、経済学はエコン、つまり合理的に行動する人を前提にしており、行動経済学はヒューマン、必ずしも合理的でない行動をする人を対象にしていることを示しているのだと思われます。

 

人間は合理的に行動しようとするが必ずしもそういう行動をになっていないため、従来の経済学ではなく、行動経済学の手法を取り入れるべきだという主張です。



 

 

1-2. 著者について

著者は、「リチャード・セイラー」です。

以下のウェブサイトを運営しているようです。

Richard H. Thaler

 

Twitterアカウントは以下のようです。

Richard H Thaler(@R_Thaler)

 

経歴

「リチャード・セイラー」の経歴については、本書によると以下のとおりです。

 

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授。全米経済研究所(NBER)の研究員。行動科学と経済学を専門とし、行動経済学のパイオニアの一人に数えられる。

行動経済学の逆襲

 

大学教授が書いた本となります。

 

1-3. 目次と概要について

本書の目次は以下のとおりです。

タイトル
第1章 経済学にとって"無関係"なこと
第2章 観戦チケットと保有効果
第3章 黒板の「おかしな行動リスト」
第4章 カーネマンの「価値理論」という衝撃
第5章 "神"を追いかけて西海岸へ
第6章 大御所たちから受けた「棒打ち刑」
第7章 お得感とぼったくり感
第8章 サンクコストは無視できない
第9章 お金にラベルはつけられない?
第10章 勝っているときの心理、負けているときの心理
第11章 いま消費するか、後で消費するか
第12章 自分の中にいる「計画者」と「実行者」
第13章 行動経済学とビジネス戦略
第14章 何を「公正」と感じるか
第15章 不公正な人は罰したい
第16章 マグカップの「インスタント保有効果」
第17章 論争の幕開け
第18章 アノマリーを連載する
第19章 最強チームの結成
第20章 「狭いフレーミング」は損になる
第21章 市場に勝つことはできない?
第22章 株式市場は過剰反応を起こす
第23章 勝ち組のほうが負け組よりリスクが高い
第24章 価格は正しくない!
第25章 一物一価のウソ
第26章 市場は足し算と引き算ができない
第27章 「法と経済学」に挑む
第28章 研究室を「公正」に割り振る
第29章 ドラフト指名の不合理
第30章 ゲーム番組出場者の「おかしな行動」
第31章 貯蓄を促す仕掛け
第32章 予測可能なエラーを減らす
第33章 行動科学とイギリス気鋭の政治家たち
終章 今後の経済学に期待すること

 

「だ・である調」

本書は、「です・ます調」ではなく、「だ・である調」です。

本ブログのような「○○です。」という文ではなく、「○○である。」という文です。

 

経済学や行動経済学の話であり、頭を使うような実験結果も出てくるため、読み応えがある本となっています。

 

概要

本書は、日常生活でも仕事でもなく、経済学を説明する本です。

経済学の中でも、「行動経済学」という学問です。

 

本書では以下のように述べています。

 

人間の行動の特徴をもっと現実に近づけたモデルをつくることをずっと求めてきたが、多くの経済学者はそれを頑として受け入れなかった。だが、創意にあふれる大勢の若い経済学者が、リスクをものともせず、伝統的な経済学の手法を打ち破ろうとしてくれたおかげで、豊かな経済理論を構築するという夢が現実のものになろうとしている。この領域はいまでは、「行動経済学」として知られるようになった。これは経済学とは別個の学問ではない。心理学をはじめとするすぐれた社会科学の知見を取り入れた経済学だ。

行動経済学の逆襲

 

行動経済学は、「人間の行動の特徴をもっと現実に近づけたモデル」を対象にした、「心理学をはじめとするすぐれた社会科学の知見を取り入れた」、経済学です。

 

この2つが大きな特徴だと思います。

 

本書では、人間の行動の特徴のなかで、合理的に行動する人を「エコン」と呼んでいるのですが、経済学はこのエコンを前提にしている学問のようです。

ただ、著者は、「人間の行動を見てみると(実験で確かめるなど)、必ずしも合理的に行動していない」という主張をしており、そのため、それを反映した行動経済学を発展させてきました。

 

行動経済学の歴史、および、著者の自伝

本書は、行動経済学そのものの説明よりはむしろ、歴史の説明がメインです。

また、著者の自伝のような本でもあると思ってます。

 

本書は以下のように、著者が過ごしてきた年代に沿って説明されていきます。

 

・第1部 エコンの経済学に疑問を抱く(1970年〜78年)(第1章〜6章)
・第2部 メンタル・アカウンティングで行動を読み解く(1979年〜85年)(第7章〜10章)
・第3部 セルフコントロール問題に取り組む(1975年〜88年)(第11章〜13章)
・第4部 カーネマンの研究室に入り浸る(1984年〜85年)(第14章〜16章)
・第5部 経済学者と闘う(1986年〜94年)(第17章〜20章)
・第6部 効率的市場仮説に抗う(1983年〜2003年)(第21章〜26章)
・第7部 シカゴ大学に赴任する(1995年〜現在)(第27章〜30章)
・第8部 意思決定をナッジする(2004年〜現在)(第31章〜終章)

 

それぞれの部で、行動経済学の研究結果の説明もありますので、行動経済学を学ぶこともできます。

ただ、メインは歴史です。

 

「その研究結果を発表したところ、経済学者から意見が出てきたため、それに対処するため実験をした」というような、対策の話が多いです。

「それにより行動経済学が発展した」という事実でもあると思います。

 

行動経済学は役に立つのか?

本書を読んだ感想としては、「行動経済学は一瞬だけ役に立つ」です。

 

「一瞬」と書いていますが、もしかすると永遠かもしれません。

これは、以下のようなことです。

 

・もし本書や他の行動経済学の本に書いていることを知ってしまったら、その知った人は、行動経済学で説明される行動とは違う行動を取ると思う
・ただ、行動経済学の本を読まない人の方が圧倒的に多いため、永遠に使えると思う

 

心理学も行動経済学も、知ってしまったら、説明されているような行動を取らないのではないかと思っています。

 

そもそも、そうでないと、「振り込め詐欺」なども無くならないと思います。

人間は学習することで、良くない行動をどんどん正していく生き物だと思っています。

 

ただ、世間に知られていないうちは、「良い方向として」、行動経済学を使うべきだと思いました。

 

これは戦略ですし、本を読んだ/学問を学んだ結果であり、利用すべきだと思います。

当然、良い方向としてです。

悪い方向(だます、詐欺)はNGです。

 

行動経済学は役に立たないと感じたら、それは行動経済学を理解したこと

行動経済学について学んで、「これは本当に使えるのかな?」と思ったのであれば、それは行動経済学を理解したということだと思っています。

 

理解した人は、行動経済学で説明されている行動とは同じ行動を取ろうとしない、もしくは、すぐに疑い、別の行動を取ろうとするからです。

 

行動経済学を学ぶ前の自分(あなた)や学んでない人々は、行動経済学で説明されるような行動をとる人が多いのだと思います。

 

そのため、「行動経済学は役に立たない」感じることは、もしかしたら「理解した上での感情であり、勘違いなのかもしれない」と思うことも大事かと思います。

少なくとも僕はそう思ってます。

行動経済学の発展の歴史を知りたい人にオススメ

本書は何度も言いますが、メインは行動経済学の歴史です。

行動経済学自体を学びたい人は、別の本の方が詳しいと思います。

 

ただ、行動経済学の研究結果も出てきますし、物語を読みながら学べますので、そのような学び方をしたいと思っている人に、本書をオススメしたいと思います。

 

1-4. 僕が学んだこと

本書の内容とともに、僕が学んだことをまとめていきたいと思います。

 

①毎日セールしていても、「お得だ」と思わせるテクニック

セール品を見ると、「お得だ」と感じますが、毎日セールをしていれば、そう感じません。

ただ、毎日セールをしていても、「お得だ」と思わせる製品もあるようです。

それは、「頻繁に購入しないもの」です。

 

アメリカでは、いつも安売りされているように見える商品がある。ラグやマットレスがそうだし、一部の小売店では、男性用スーツがそうだ。このような形で売られている財には、共通する2つの特徴がある。頻繁に買うようなものではないこと、そして、質を評価することが難しいことである。頻繁に買わないものだと、消費者はいつもセールが行われていることに気づきにくい。新しいマットレスを買おうと店に行って、それがたまたまセールの週だったら、ほとんどの人にとってはうれしい驚きだ。

行動経済学の逆襲

 

たまたまセールに出会え、「ラッキー!」って思うのだと思います。

そして、「セールがすぐに終わるかもしれないから、今のうちに買っておこう」と思って買うんだと思います。

 

日本でも「閉店セール」「2着目半額」などを、「一年中やっているんじゃないか?」と思うお店はあります。

これらの店は、この「お得」だと思わせるテクニックを使っているんだと思ってます。

 

実際にセール価格だし、2着目が半額なので、嘘ではないですからね。

価格が妥当かどうかは比較する必要がありますけど‥。

 

②損をしないように、「公正さ」をアピールする

企業にとって、「公正さ」は重要だと思います。

現在は何か小さなトラブルがあったら、SNSですぐに広がってしまいます。

 

ただ、「公正さ」を求めすぎて、お金的に損をする必要はないと思います。

その辺りをうまく対処した例がありましたので紹介します。

ゲレンデのリフト券の話です。

 

シーズン末にリフト券をほとんどすべて使い残すことになりそうな人もいた。リフト券を次のシーズンに使うことはできないかと、だめもとで問い合わせてくるケースもあったが、グリーク・ピーク側は、申し訳ないがきまりなのでそれはできないと応じた。‥しかしアルは、こうした顧客に特典を用意していた。今年もテンパックを購入すれば、前年の未使用のリフト券をそのままお使いいただけます、と伝えるのである。もちろん、前の年に2〜3回しかスキーに行かなかった人が、次の年に10回以上行くとは思えないが、この特典はスキーヤーの心をくすぐった。‥グリーン・ピークは「公正」であろうと努力していると好意的に受け止められたようだ。

行動経済学の逆襲

 

「前の年に2〜3回しかスキーに行かなかった人が、次の年に10回以上行くとは思えないが」という部分が重要だと思います。

 

この考え方ができれば、「今年もテンパックを購入すれば、前年の未使用のリフト券をそのままお使いいただけます」という行動をする人が少ないであろうという予測ができ、企業としてはあまり損をしないという想定が取れます。

そして、消費者に対しては、「公正さ」をアピールできるわけです。

 

このように、企業側の行動で損をさせるのではなく、消費者側の行動で損になるような仕組みを導入すべきだと感じました。

スキーに行かないのは、消費者の意思ですからね。

 

このテクニックは、他のサービスにも応用できそうだと思いました。

 

③「損失」を感じさせないよう、価格を上げる

人間は、損失に敏感のようです。

 

損失の苦痛は利益を得たときの喜びの2倍強く感じられるということだ。

行動経済学の逆襲

 

つまり、通常価格から値上げをすると、値上げ分を損失だと感じてしまいます。

ただ、そう感じさせないテクニックが紹介されていました。

自動車のディーラーの話です。

 

自動車の人気モデルが品薄状態になっていて、いま購入しても納車まで2ヶ月待たなければなりません。

行動経済学の逆襲

 

このとき、以下の2つの場合での、価格の値上げについて、「容認できる」という人と「不公正である」と思う人の数が分かれました。

 

①容認できる29%、不公正である71%
あるディーラーはこのモデルを店頭表示価格で販売していましたが、いまは店頭表示価格に200ドル上乗せして売っています。

 

②容認できる58%、不公正である42%
あるディーラーはこのモデルを店頭表示価格から200ドル値引きして販売していましたが、いまは店頭表示価格で売っています。

 

上記は両方とも、200ドルの値上げは一緒ですが、人が受ける印象が異なりました。

 

「店頭表示価格」について、①の場合は19,800ドル、②の場合は20,000ドルであったなら、どちらも19,800ドルから20,000ドルへの値上げになります。

ただ、②のほうは、「値引き」をなくしただけであり、損失だと感じない人が多かったということです。

 

つまり、最初の「店頭表示価格」を、適切に設定しておけば、後から、消費者に損を感じさせずに値上げをすることも可能だということです。

 

どの企業も、想定される価格設定のうち最も高い価格を「通常価格」とし、そこから外れるときには「セール」か「割り引き」と表示するべきである。そうすれば、割り引きをやめても、割り増しをするときのようには反感をかわない。

行動経済学の逆襲

 

これを「騙している」ととらえる人もいると思います。

ただ、テクニックと考えてもいいと思います。

 

そもそも「通常価格」は企業側が自由につけていいわけです。

賢い消費者は、その価格をそのまま信じるのではなく、他社のディーラーと比較するなりして、考えないといけないです。

できるだけ、エコン(合理的に行動する人)になろうとすべきです。

 

また、「知らぬが仏」という言葉のとおり、消費者は損をする感情を抱かないわけですから、企業も消費者もWin-Winな関係になっていると思います。

 

2. 終わりに

本書を読むことで、「行動経済学」をもっと学びたいと思うようになりました。

 

心理学の本を読んだ時もそうですが、心理学も行動経済学も、知っている人が有利に立てると思ってます。

これは企業側の視点でも、消費者側の視点でもどっちもです。

 

消費者側の視点としては、企業の言い分をそのまま受け取るのではなく、よく考えて、「何か裏があるのではないか」と疑ったり、計算したりして、お金をきちんと管理すべきだと思います。

 

一方、企業側の視点としては、できるだけ消費者にサービスを提供してもらうため、また、資本主義ですので、他の企業に負けないようにするため、戦略を立てて行動すべきだと思います。

 

これらのために「行動経済学」が使えると思ってます。

 

そのような行動を取るために、まずは「行動経済学」の発展の歴史を知りたいと思っている人は、ぜひ本書を手に取ってみてください。

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